データセンターがこれ1つでわかるガイド › 第4章

電力と冷却(AIでGW級になる理由)

データセンターは使った電気がほぼすべて熱になる建物です。AIでラック1台の電力が10倍以上になり、電気を届ける設備と熱を捨てる設備の両方が作り直しになっています。数字と方式を比べながら整理します。

更新日: 2026年10月11日(2026年10月時点の公開情報)

この章の要点

  1. ラック1台の電力が10倍以上に: 一般的なラックの最頻値は11kW。AI用のGB200 NVL72は1台で約120kW。2027年に出荷予定の次の世代は約600kWと予告されています。
  2. 10万GPUで約150MW: GPU1基あたり周辺機器込みで約1.3〜1.4kW。大型の学習用クラスターは中規模の発電所なみの電力を使います【推定】。
  3. 効率(PUE)は世界平均で横ばい、大手は1.1前後: 世界平均は1.5台半ば、Googleは1.09。日本は2030年度に事業者平均1.4以下が目標です。
  4. 冷却は空気から液体へ: 高密度のGPUラックはチップに冷却板を当てる「直接液冷」が前提になりつつあります。

1. なぜAIでGW級になるのか

サーバーが使った電気は、ほぼすべて熱になります。だから電力が増えると、冷却も同じだけ増えます。AI用のGPUは1基で数百W〜1kW超を使い、それを1ラックに数十基詰め込むため、ラックあたりの電力と熱が一気に上がりました。

対象電力出典・時点
一般的なラック(最頻値)11kW(2025年調査は9kW)Uptime Institute 調査(2026年7月)
一般的なラック(平均、30kW超向け施設を除く)7.8kW同上
NVIDIA H100(GPU 1基)700W公開資料の値(二次)
NVIDIA B200(GPU 1基)1,000W公開資料の値(二次)
NVIDIA GB200 NVL72(GPU 72基+CPU 36基のラック)約120kW(変換損失込み123.6kW)SemiAnalysis(2025年)
国内の高密度コロケーションの対応例ラックあたり最大150kWMCデジタル・リアルティ NRT14(2026年4月)
NVIDIA Rubin Ultra NVL576(Kyberラック)約600kW(予告)NVIDIA GTC 2025 の発表報道(2025年3月)。2027年後半出荷予定
10万GPUの電力感【推定】

H100を10万基並べたクラスターのIT電力は約150MWと推計されています(GPU 700Wに、CPU・ネットワーク・電源などで約575W、さらにストレージ・スイッチなどで約1割上乗せ)(NADDOD, 2024年)。GPU1基あたりにならすと約1.3〜1.4kWです。

実例として、米メンフィスのxAI「Colossus」は当初計画で約10万GPU・最大150MWで、地元の電力当局が2024年11月に150MWの案件を承認しました(CleanTechnica, 2024年12月)。2024年7月時点の受電は8MWしかなく、不足分を可搬型のガス発電機で補ったとされます(二次)。

さらに、AIのDCではサーバーの負荷が1秒以内に定格の50%超も変動することがあり、電力網や蓄電池との付き合い方も新しい課題になっています(IEA, 2026年4月)。

2. PUE(電力効率)の物差し

PUE = データセンター全体の消費電力 ÷ IT機器の消費電力
理論上の下限は1.0。たとえばIT機器が10MWでPUEが1.4なら、施設全体は14MWで、差の4MWが冷却・電源ロス・照明などに使われています【換算例】。国際規格ISO/IEC 30134-2で定義されています。
対象PUE出典・時点
世界平均(Uptime Institute 年次調査)2007年 2.5 → 2014年 1.65 → 2018年 1.58 → 2024年 1.56。2025年は約1.54で「6年連続ほぼ横ばい」Uptime Institute の調査の整理(二次, 2025年)
Google(全社・通年)1.09(2024年)、1.10(2023年)Google Data Centers(2025年)
Microsoft(最新世代の設計値)1.12Microsoft Azure Blog(2022年)
北海道・石狩のDC(外気冷房)実績1.15(2012年3月時点)さくらインターネット資料(2012年)
日本国内の平均約1.7(2021年度時点)。1.4以下は上位2割程度ビジネスネットワーク報道(二次)

日本の省エネ法の目標と基準

「目標」と「基準」では拘束力が違います。実際の適用は資源エネルギー庁の原文で確認してください。

3. 冷却方式の比較

方式しくみ目安・事例
空冷(CRAC/CRAH)空調機で冷気をつくり、ラックの吸気側(コールドアイル)と排気側(ホットアイル)を仕切って混ざらないようにするサーバー吸気の推奨は18〜27℃(ASHRAEの指針。規制ではない)
外気冷房冷たい外気で冷やし、冷凍機の電力を減らす寒冷地が有利。北海道・石狩のDCは年間PUE 1.11を見込んで建設(2011年)
リアドア熱交換器ラック背面の扉に水冷コイルを付け、排熱をその場で冷やす製品の定格は1ラック14〜55kW(HPE)、最大78kW(nVent)、扉単位で10〜120kW(Supermicro)
直接液冷(コールドプレート)GPU・CPUに冷却板を密着させ、CDU(冷却液分配ユニット)を通して冷却液を循環させる53kWのラックの実験で熱の94%を液体側で回収(研究論文, 2024年)。GB200 NVL72は全面液冷
液浸冷却(単相/二相)サーバーごと絶縁性の液体に沈める。単相は液体のまま循環、二相は沸騰と凝縮で冷やす国内で通信会社などが実証。二相は伝熱性能が高いが冷却液の選定が難しい

出典: TechTarget(ASHRAEの指針の整理)、クラウドWatch、StorageReview・HPE、NSF PAR、ビジネス+IT。

4. 水と廃熱

5. 800V直流給電(次の世代の配電)

NVIDIAは、1MW級以上のラックに向けて800Vの直流(HVDC)給電への移行を主導し、2027年のKyber世代と同時に本格展開すると発表しました(NVIDIA Technical Blog, 2025年5月)。

この章と一緒に使う計算アプリ

⚡電力・電気代(PUE)IT電力とPUEから、施設全体の電力と年間の電気代を概算します。近日公開
❄️冷却容量の換算(冷凍トン・BTU/h)発熱(kW)を冷凍トン・BTU/hに換算し、冷却の規模をつかみます。近日公開
📐ラック数→MW・GWと床面積ラック数とラックあたりkWから、MW・GWの規模に換算します。近日公開
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出典

本文の数字は次の公開資料によります(かっこ内は資料の時点)。見通し・予測は【見通し】、推計や当サイトの換算は【推定】と書いています。

  1. Uptime Institute「Global Data Center Survey 2026」(2026年7月29日)
  2. SemiAnalysis「GB200 Hardware Architecture and Component」(2025年)
  3. Morph:NVIDIA H100の仕様(2026年10月確認・二次)
  4. GPUPerHour:B200の仕様(2026年10月確認・二次)
  5. ビジネスネットワーク:MCデジタル・リアルティ NRT14(2026年4月8日)
  6. DatacenterDynamics:Rubin Ultra NVL576は600kW(2025年3月)
  7. NADDOD:10万基のH100クラスター(2024年)
  8. CleanTechnica:xAI Colossusの電力(2024年12月19日)
  9. Glenn Klockwood:Colossusの整理(2026年10月確認・二次)
  10. IEA「Key Questions on Energy and AI」PDF(2026年4月)
  11. Rittal:PUEとISO/IEC 30134-2の解説(2026年10月確認・二次)
  12. Upsite:Uptime調査のPUE推移の整理(2025年・二次)
  13. mgrid.org:Uptime 2025年調査のPUE(2025年10月・二次)
  14. Google Data Centers「Efficiency」(2025年)
  15. Microsoft Azure Blog:データセンターの効率(2022年)
  16. さくらインターネット:石狩DCの資料(2012年6月21日)
  17. ビジネスネットワーク:国内のPUEの水準(IIJ連載・二次)
  18. 資源エネルギー庁「データセンター」特設ページ(2026年)
  19. 中部経済産業局:省エネ法 2026年度の定期報告(2026年度)
  20. TechTarget:データセンターの温度・湿度の指針(2026年10月確認)
  21. クラウドWatch:石狩DCの外気冷房(2011年)
  22. StorageReview:Supermicroのリアドア熱交換器(2025年)
  23. NSF PAR:直接液冷の実験論文(2024年)
  24. ビジネス+IT:液浸冷却の方式(2026年10月確認)
  25. Stanford Undergraduate Research Journal:米国DCのWUE(2025年)
  26. DatacenterDynamics:Microsoftの蒸発ゼロ冷却設計(2024年12月)
  27. ITPro:Microsoftの水を消費しない冷却設計(2024年12月)
  28. 東京都:データセンター廃熱利用実装促進事業(2026年7月16日)
  29. クラウドWatch:地方共生型高効率DCの廃熱試算(2022年)
  30. NVIDIA Technical Blog:800V HVDC(2025年5月)
  31. Power Electronics News:800V HVDCの構成(2025年)
  32. さくらインターネット:石狩DCの高電圧直流給電(2011年5月9日)