この章の要点
- ラック1台の電力が10倍以上に: 一般的なラックの最頻値は11kW。AI用のGB200 NVL72は1台で約120kW。2027年に出荷予定の次の世代は約600kWと予告されています。
- 10万GPUで約150MW: GPU1基あたり周辺機器込みで約1.3〜1.4kW。大型の学習用クラスターは中規模の発電所なみの電力を使います【推定】。
- 効率(PUE)は世界平均で横ばい、大手は1.1前後: 世界平均は1.5台半ば、Googleは1.09。日本は2030年度に事業者平均1.4以下が目標です。
- 冷却は空気から液体へ: 高密度のGPUラックはチップに冷却板を当てる「直接液冷」が前提になりつつあります。
1. なぜAIでGW級になるのか
サーバーが使った電気は、ほぼすべて熱になります。だから電力が増えると、冷却も同じだけ増えます。AI用のGPUは1基で数百W〜1kW超を使い、それを1ラックに数十基詰め込むため、ラックあたりの電力と熱が一気に上がりました。
| 対象 | 電力 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 一般的なラック(最頻値) | 11kW(2025年調査は9kW) | Uptime Institute 調査(2026年7月) |
| 一般的なラック(平均、30kW超向け施設を除く) | 7.8kW | 同上 |
| NVIDIA H100(GPU 1基) | 700W | 公開資料の値(二次) |
| NVIDIA B200(GPU 1基) | 1,000W | 公開資料の値(二次) |
| NVIDIA GB200 NVL72(GPU 72基+CPU 36基のラック) | 約120kW(変換損失込み123.6kW) | SemiAnalysis(2025年) |
| 国内の高密度コロケーションの対応例 | ラックあたり最大150kW | MCデジタル・リアルティ NRT14(2026年4月) |
| NVIDIA Rubin Ultra NVL576(Kyberラック) | 約600kW(予告) | NVIDIA GTC 2025 の発表報道(2025年3月)。2027年後半出荷予定 |
H100を10万基並べたクラスターのIT電力は約150MWと推計されています(GPU 700Wに、CPU・ネットワーク・電源などで約575W、さらにストレージ・スイッチなどで約1割上乗せ)(NADDOD, 2024年)。GPU1基あたりにならすと約1.3〜1.4kWです。
実例として、米メンフィスのxAI「Colossus」は当初計画で約10万GPU・最大150MWで、地元の電力当局が2024年11月に150MWの案件を承認しました(CleanTechnica, 2024年12月)。2024年7月時点の受電は8MWしかなく、不足分を可搬型のガス発電機で補ったとされます(二次)。
さらに、AIのDCではサーバーの負荷が1秒以内に定格の50%超も変動することがあり、電力網や蓄電池との付き合い方も新しい課題になっています(IEA, 2026年4月)。
2. PUE(電力効率)の物差し
理論上の下限は1.0。たとえばIT機器が10MWでPUEが1.4なら、施設全体は14MWで、差の4MWが冷却・電源ロス・照明などに使われています【換算例】。国際規格ISO/IEC 30134-2で定義されています。
| 対象 | PUE | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 世界平均(Uptime Institute 年次調査) | 2007年 2.5 → 2014年 1.65 → 2018年 1.58 → 2024年 1.56。2025年は約1.54で「6年連続ほぼ横ばい」 | Uptime Institute の調査の整理(二次, 2025年) |
| Google(全社・通年) | 1.09(2024年)、1.10(2023年) | Google Data Centers(2025年) |
| Microsoft(最新世代の設計値) | 1.12 | Microsoft Azure Blog(2022年) |
| 北海道・石狩のDC(外気冷房) | 実績1.15(2012年3月時点) | さくらインターネット資料(2012年) |
| 日本国内の平均 | 約1.7(2021年度時点)。1.4以下は上位2割程度 | ビジネスネットワーク報道(二次) |
日本の省エネ法の目標と基準
- データセンター業の特定事業者には、2030年度までにPUE 1.4以下という目標(事業者が持つDCの平均)が設けられ、PUEの算出と報告が求められます。対象は、DC業のエネルギー使用量が原油換算で年1,500kl以上で、建物・付帯設備を管理する権限を持つ事業者です(資源エネルギー庁, 2026年)。
- 2029年度以降に新設するDCには、稼働開始から2年たった翌年度以降、PUE 1.3以下の基準がかかります。満たさない場合は合理化計画の作成の指示、従わなければ公表・命令の対象になると整理されています(資源エネルギー庁, 2026年)。
- 2026年度に提出する定期報告からDCの項目が加わり、テナント型のDC事業者も対象になりました(中部経済産業局, 2026年度)。
「目標」と「基準」では拘束力が違います。実際の適用は資源エネルギー庁の原文で確認してください。
3. 冷却方式の比較
| 方式 | しくみ | 目安・事例 |
|---|---|---|
| 空冷(CRAC/CRAH) | 空調機で冷気をつくり、ラックの吸気側(コールドアイル)と排気側(ホットアイル)を仕切って混ざらないようにする | サーバー吸気の推奨は18〜27℃(ASHRAEの指針。規制ではない) |
| 外気冷房 | 冷たい外気で冷やし、冷凍機の電力を減らす | 寒冷地が有利。北海道・石狩のDCは年間PUE 1.11を見込んで建設(2011年) |
| リアドア熱交換器 | ラック背面の扉に水冷コイルを付け、排熱をその場で冷やす | 製品の定格は1ラック14〜55kW(HPE)、最大78kW(nVent)、扉単位で10〜120kW(Supermicro) |
| 直接液冷(コールドプレート) | GPU・CPUに冷却板を密着させ、CDU(冷却液分配ユニット)を通して冷却液を循環させる | 53kWのラックの実験で熱の94%を液体側で回収(研究論文, 2024年)。GB200 NVL72は全面液冷 |
| 液浸冷却(単相/二相) | サーバーごと絶縁性の液体に沈める。単相は液体のまま循環、二相は沸騰と凝縮で冷やす | 国内で通信会社などが実証。二相は伝熱性能が高いが冷却液の選定が難しい |
出典: TechTarget(ASHRAEの指針の整理)、クラウドWatch、StorageReview・HPE、NSF PAR、ビジネス+IT。
4. 水と廃熱
- WUE(水使用効率)=年間の水消費量(L)÷ IT機器の電力量(kWh)。単位はL/kWhです。米国のDCの平均は2023年で約0.36L/kWhと推計されています【推定】(Stanford の学生研究誌, 2025年)。
- Microsoftの全体平均のWUEは0.30L/kWh(2021年の0.49から39%減)。2024年8月以降に設計するDCは、チップを直接冷やす閉じた配管で、冷却のために水を蒸発させない方式を採ると発表しました。1拠点あたり年間1億2,500万L超の水を節約する一方、年間の電力は「わずかに増える」としています(DatacenterDynamics・ITPro, 2024年12月)。
- 廃熱の利用: 東京都の「データセンター廃熱利用実装促進事業」に東京電力ホールディングスが代表事業者として採択されました(2026年6月30日)。近くの温浴施設・工場への熱の供給などをめざします(東京都, 2026年7月16日)。NTTファシリティーズは、IT容量36MWのDCの廃熱で戸建て住宅約2,300戸などの暖房・給湯を賄えると試算しています(構想)(クラウドWatch, 2022年)。
5. 800V直流給電(次の世代の配電)
NVIDIAは、1MW級以上のラックに向けて800Vの直流(HVDC)給電への移行を主導し、2027年のKyber世代と同時に本格展開すると発表しました(NVIDIA Technical Blog, 2025年5月)。
- 理由: 今のラック内の54V配電はkW級のラック向けで、1MWのラックを54Vでまかなうと最大200kgの銅のバスバーが要るためです。
- 構成案: DCの外周で13.8kVの交流を、固体変圧器で直接800Vの直流に変えます。電源・半導体の大手など約20社が参加しています(Power Electronics News・DatacenterDynamics, 2025年)。
- NVIDIAは端から端で最大5%の効率改善、総保有コスト最大30%減を見込んでいます(メーカーの見通し)。国内でも石狩のDCが2011年に高電圧直流給電を実証し、交流より最大2割程度の電力削減を見込みました(さくらインターネット, 2011年)。
この章と一緒に使う計算アプリ
出典
本文の数字は次の公開資料によります(かっこ内は資料の時点)。見通し・予測は【見通し】、推計や当サイトの換算は【推定】と書いています。
- Uptime Institute「Global Data Center Survey 2026」(2026年7月29日)
- SemiAnalysis「GB200 Hardware Architecture and Component」(2025年)
- Morph:NVIDIA H100の仕様(2026年10月確認・二次)
- GPUPerHour:B200の仕様(2026年10月確認・二次)
- ビジネスネットワーク:MCデジタル・リアルティ NRT14(2026年4月8日)
- DatacenterDynamics:Rubin Ultra NVL576は600kW(2025年3月)
- NADDOD:10万基のH100クラスター(2024年)
- CleanTechnica:xAI Colossusの電力(2024年12月19日)
- Glenn Klockwood:Colossusの整理(2026年10月確認・二次)
- IEA「Key Questions on Energy and AI」PDF(2026年4月)
- Rittal:PUEとISO/IEC 30134-2の解説(2026年10月確認・二次)
- Upsite:Uptime調査のPUE推移の整理(2025年・二次)
- mgrid.org:Uptime 2025年調査のPUE(2025年10月・二次)
- Google Data Centers「Efficiency」(2025年)
- Microsoft Azure Blog:データセンターの効率(2022年)
- さくらインターネット:石狩DCの資料(2012年6月21日)
- ビジネスネットワーク:国内のPUEの水準(IIJ連載・二次)
- 資源エネルギー庁「データセンター」特設ページ(2026年)
- 中部経済産業局:省エネ法 2026年度の定期報告(2026年度)
- TechTarget:データセンターの温度・湿度の指針(2026年10月確認)
- クラウドWatch:石狩DCの外気冷房(2011年)
- StorageReview:Supermicroのリアドア熱交換器(2025年)
- NSF PAR:直接液冷の実験論文(2024年)
- ビジネス+IT:液浸冷却の方式(2026年10月確認)
- Stanford Undergraduate Research Journal:米国DCのWUE(2025年)
- DatacenterDynamics:Microsoftの蒸発ゼロ冷却設計(2024年12月)
- ITPro:Microsoftの水を消費しない冷却設計(2024年12月)
- 東京都:データセンター廃熱利用実装促進事業(2026年7月16日)
- クラウドWatch:地方共生型高効率DCの廃熱試算(2022年)
- NVIDIA Technical Blog:800V HVDC(2025年5月)
- Power Electronics News:800V HVDCの構成(2025年)
- さくらインターネット:石狩DCの高電圧直流給電(2011年5月9日)