この章の要点
- 市場は2桁成長の見通し: 国内コロケーション市場は2024年の9,717億円から2029年に1兆7,817億円へ(年平均12.9%)【見通し】(IDC Japan, 2025年11月)。
- 東京圏への集中と電力の制約: 国内DCの約9割が東京圏・大阪圏にあり(総務省 情報通信白書 令和7年版)、千葉県印西・白井エリアなどには供給できる量を超える申込が集中しています(資源エネルギー庁, 2025年10月)。
- 電力需要の想定は上振れ: DCと半導体工場の新増設で、最大需要電力が2030年度に+420万kW、2035年度に+762万kW増える想定です【見通し】(OCCTO, 2026年1月)。
- 政策は「地方分散×脱炭素電源×送電網の先回り」: ワット・ビット連携(2025年6月)、GX戦略地域のDC集積型9地域の認定(2026年9月11日)、補助金・助成が並行しています。
1. 市場規模(調査会社ごとの数字)
| 調査 | 対象 | 数字 | 時点 |
|---|---|---|---|
| IDC Japan | 国内コロケーション市場 | 2024年 9,717億円 → 2029年 1兆7,817億円(年平均12.9%)【見通し】。2029年にはハイパースケール向けが40%超 | 2025年11月 |
| IDC Japan(総務省 情報通信白書が引用) | 国内データセンターサービス市場(売上高) | 2023年 2兆7,361億円 → 2028年 5兆812億円【見通し】 | 2024年10月 |
| 富士キメラ総研 | 国内データセンターサービス市場 | 2025年 4兆7,231億円(見込み)→ 2030年 6兆8,189億円【見通し】 | 2026年 |
| IDC Japan | 国内事業者DCの建設投資(新設・増設) | 2028年に1兆円超。2026年に2024年の約2倍【見通し】 | 2025年4月 |
| IDC Japan | 国内事業者DCの電力容量 | 2024年末 2,365.8MVA → 2029年末 4,499.6MVA(年平均+13.7%)【見通し】 | 2025年2月 |
| JLL | 日本のDC市場(売上ベース) | 2024年 234億米ドル → 2030年 334億米ドル(年平均6.7%)【見通し】 | 2026年5月 |
「コロケーション」「データセンターサービス(クラウドを含む)」など、対象の範囲が調査ごとに違うため、数字どうしを直接は比べられません。
取引も大型化しています。2026年5月には、大阪圏の40.5MWのハイパースケールDCが1,560億円で売却され、単一資産のDC取引として日本で過去最大とされました(JLL, 2026年5月11日)。
2. 容量と地域の集中(東京圏・印西)
- 東京の稼働容量は1,160MW(2025年上期、2%増)、開発中の計画は約1,948MW、空室率は6%。最大の集積地は千葉県印西で、東京の稼働容量の32%、開発計画の44%を占めます(Cushman & Wakefield、Real Estate Asia報道)。
- 別の集計では、首都圏(Greater Tokyo)の容量は稼働中1,086MW・計画中2,544MW(2026年1〜3月)。日本の容量需要の6〜7割をハイパースケールが占めます(CBRE、Real Estate Asia報道)。
- 国内DCの約9割が東京圏・大阪圏に集中しています(総務省 情報通信白書 令和7年版, 2025年7月)。
- 印西では、東京電力パワーグリッドの千葉印西変電所(275/66kV)が、DCの需要増に対応するため2024年6月に運転を始めました(東洋経済オンライン, 2025年)。
1つ目と2つ目は集計した会社・範囲・時点が違うため、数字がずれています。
3. 電力需要の見通し(OCCTO・エネルギー基本計画)
| 年度 | DC・半導体工場の新増設による最大需要電力の増加【見通し】 |
|---|---|
| 2026年度 | +83万kW |
| 2030年度 | +420万kW(4.2GW) |
| 2035年度 | +762万kW(7.62GW) |
出典: 電力広域的運営推進機関(OCCTO)「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」(2026年1月21日)。同じ想定で、2035年度の全国の最大需要電力は1億6,460.1万kWです。前回(2025年1月)の想定では、2034年度に約715万kW増えると見込んでいました。
- 2026年版の想定は、DC・半導体の需要増が前回より大きい一方、事業の遅れや計画変更で増加の多くが想定期間の後半にずれ込んでいると解説されています(Shulman Advisory, 2026年1月)。
- 第7次エネルギー基本計画とGX2040ビジョン(2025年2月18日閣議決定)は、電力需要が中長期に増加するとし、その主な要因にDCや半導体工場を挙げます。2040年度の発電電力量は1.1〜1.2兆kWh程度を想定しています(KPMG解説, 2025年9月)。
- GX2040ビジョンは、DCの東京圏・大阪圏への集中から地域分散を進める必要があるとし、望ましい立地として「安定した土地と産業用水があり、脱炭素電源が豊富で系統に余裕のある変電所の近く」を挙げています(第一生命経済研究所レポート, 2025年)。
4. 政策
ワット・ビット連携(電力と通信を一体で整える)
- 総務省と経産省が2025年3月に官民懇談会を立ち上げ、2025年6月12日に「取りまとめ1.0」を公表しました(経産省・総務省, 2025年6月)。
- 挙げた課題は、①東京・大阪圏への過度な集中、②事業者の好みに合う適地の不足、③系統接続の申請が大規模になり整備のコストと時間が増えていること、④通信インフラの東京・大阪集中による弱さ、の4つです。
- 方向性は3本柱です。(1) 電力を早く供給できる場所(ウェルカムゾーンマップ)への立地の促進、(2) GW級の大規模DC集積拠点を複数つくり、電力・通信インフラを先行して整える、(3) 地方分散を続け、APN(オール・フォトニクス・ネットワーク)を使う運用の研究開発(総務省, 2025年6月)。
- 投機的な立地による過剰な系統増強を抑えるため、受益者負担の考え方で費用負担を検討するとされました。
GX戦略地域(データセンター集積型)
- 経産省は2025年8月に「GX戦略地域」制度を設けました。類型は①コンビナート等再生型、②データセンター集積型、③脱炭素電源活用型の3つです(経産省, 2025年8月26日)。
- 2026年9月11日、18地域を認定。うちDC集積型は9地域:北海道(石狩市・苫小牧市)、秋田、宮城、栃木、茨城、富山、香川、福岡(北九州市・直方市・鞍手町)、鹿児島。送電線の整備や設備投資の支援、規制緩和の対象になり、経産省は脱炭素電源の豊富な地域に1GW級のDCを集めることをめざしています(時事通信, 2026年9月11日)。
- 北海道は、石狩市・苫小牧市に進出するDC事業者を公募で選ぶ方針で、限られた電力の有効活用と地域との共生を重視するとしています(北海道新聞, 2026年9月)。
- 内閣官房に「データセンターの立地に関する関係府省連絡会議」が置かれ、2026年9月10日に第1回が開かれました。立地の促進と地域との共生を一体で進めるのが趣旨です(内閣官房, 2026年9月10日)。
補助金・助成
| 制度 | 中身 | 規模 |
|---|---|---|
| 総務省 デジタルインフラ強靱化事業(基金) | 東京圏・大阪圏以外のDC・海底ケーブル等を補助(補助率1/2) | 予算は合計1,329億円 |
| 経産省 データセンター地方拠点整備事業費補助金(令和5年度) | 土地造成・電力通信インフラ・建屋設備の一部を補助(補助率1/2) | ソフトバンクの苫小牧(北海道)に最大300億円(総事業費650億円超) |
| 経済安全保障推進法「クラウドプログラム」 | 国内のAI計算基盤(GPUクラウド)への助成 | 2024年4月に5件・上限計約725億円(さくらインターネット約501億円ほか)。ソフトバンクは2024年5月に上限421億円 |
出典: 総務省事業ページ、経産省募集要領(2023年9月)、ソフトバンク(2023年11月・2024年5月)、Impress Watch(2024年4月)。このほか、省エネ法でDC業にPUE(電力効率)の目標と基準が設けられています(電力と冷却の章)。骨太方針2025には「データセンターのREITへの組入促進」が入りました(ARES)。
5. 海外の大手クラウドの対日投資(発表ベース)
| 会社 | 発表の中身 | 発表時期 |
|---|---|---|
| AWS | 2027年までに東京・大阪のクラウドインフラへ2兆2,600億円 | 2024年1月 |
| Microsoft | 2年間で29億ドル(同社の日本で過去最大) | 2024年4月 |
| Oracle | 10年間で80億ドル超 | 2024年4月 |
| 2024年までにネットワークインフラへ1,000億円。印西のDCは2023年3月に稼働 | 2022年10月 |
2025〜2026年に新たな対日投資の発表があったかは、今回の調査では確認できていません。
6. 主な案件(MW・時期・状況)
| 案件 | 場所 | 規模 | 時期 | 状況(2026年10月時点の公開情報) |
|---|---|---|---|---|
| KDDI 大阪堺データセンター | 大阪府堺市(旧シャープ堺工場) | 最大受電 約50MW | 2026年1月22日 | 稼働。GB200 NVL72を直接液冷で運用 |
| ソフトバンク 堺AIデータセンター | 大阪府堺市(旧シャープ堺工場) | 約150MW(将来250MW超) | 2026年中の稼働目標 | 稼働したかは確認できていない |
| ソフトバンク 北海道苫小牧AIデータセンター | 北海道苫小牧市 | 受電300MW超まで拡大の見込み | 2026年度開業予定 | 稼働したかは確認できていない |
| さくらインターネット 石狩 | 北海道石狩市 | 2027年12月末までにGPU約8,000基の計画 | 2025年6月にコンテナ型DCが稼働 | 2026年2月にBlackwell GPU約1,100基のAI基盤が稼働 |
| 東急不動産 石狩再エネデータセンター第1号 | 北海道石狩市 | 受電15MW(再エネ100%) | 2026年3月完成 | 2026年8月に一部稼働の予定と発表 |
| NTTデータ 京阪奈 OSK11 | 京都府精華町 | IT負荷30MW | 2026年2月 | 開業 |
| MCデジタル・リアルティ NRT14 | 千葉県印西市 | 最大31MW(キャンパス全体約100MW) | 2026年4月 | 開業。ラックあたり最大150kW(当初予定から約4か月遅れ) |
| NTTデータ TKY11 / TKY12 | 千葉県白井市 | 50MW / IT約200MW(6棟) | 2027年4月 / 2030年以降 | 建設・計画 |
| 秋田のAI向けDC構想 | 秋田市北部の工業団地 | 最大500MW(整備費約2兆円規模とされる) | 2030年代前半の稼働目標 | 構想段階。まず2027年末に1.5MWの小型DCの計画 |
| 薩摩川内のAI向けDC | 鹿児島県(火力発電所跡地) | 受電350MW | 2026年度着工・2032年度までに本格稼働の目標 | 計画段階 |
| 糸島のDC計画 | 福岡県糸島市 | 最大300MW | 2029年初めに2棟、2034年に全6棟の目標 | 2025年の報道時点の計画(現状は未確認) |
| 双葉町の分散型AIデータセンター | 福島県双葉町 | — | 2026年12月運用開始予定 | 経産省の立地支援事業に採択 |
出典: 各社の発表と報道(本ページ末尾の出典一覧)。国内の不動産会社の参入も続き、三井不動産はDC事業への累計投資が6,000億円超・7棟を開発中と発表しています(MONOist, 2026年7月)。計画値は変わることがあります。
7. 課題と論点
- 系統接続: 千葉県印西・白井エリアなど一部地域に、供給できる量を超える申込が集中しています(資源エネルギー庁, 2025年10月)。一方、審議会では申込のあとに契約電力が変わったり計画ほど使用量が伸びなかったりする例が挙げられ、「過大な設備増強のおそれ」も指摘されました(経産省 審議会資料, 2025年)。変電所は用地取得から完成まで通常10〜15年かかるとの報道があります(東洋経済オンライン, 2025年)。
- 人手: 建設業の就業者は1997年の685万人から2024年に477万人へ減り、55歳以上が約4割です(国土交通省資料, 2025年5月)。詳しくは建設費・人材・職種へ。
- 工期の遅れ: ソフトバンク堺は稼働目標を2025年中から2026年中へ、NRT14は2025年12月から2026年4月へ遅れました(各社発表)。
- 地域との合意: 東京都昭島市の物流・DC開発には、地下水や野生生物、電力使用の急増を心配する住民が請願を出しました(Japan Times, 2024年7月)。2026年時点の状況は確認できていません。秋田の大規模構想についても、地元紙が丁寧な説明が要ると社説で主張しています(秋田魁新報, 2026年9月)。
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出典
本文の数字は次の公開資料によります(かっこ内は資料の時点)。見通し・予測は【見通し】、推計や当サイトの換算は【推定】と書いています。
- IDC Japan「国内データセンターコロケーション市場予測」(2025年11月19日)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」データセンター(2026年)
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」データセンターの地域分布(2025年7月)
- クラウド Watch:富士キメラ総研の市場予測(2026年)
- IDC Japan「国内データセンター建設投資予測」(2025年4月7日)
- IDC Japan:国内事業者DCの電力容量予測(2025年2月19日)
- JLL:大阪圏のDC取引(2026年5月11日)
- Real Estate Asia:東京の稼働容量(Cushman & Wakefield, 2025年下期)
- Real Estate Asia:首都圏の容量とラック料金(CBRE, 2026年1〜3月)
- 東洋経済オンライン:印西の変電所(2025年)
- OCCTO「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」(2026年1月21日)
- Shulman Advisory:OCCTO 2026年版想定の解説(2026年1月)
- KPMG:電力需要の見通し(2025年9月)
- 第一生命経済研究所:GX2040ビジョンの立地の考え方(2025年)
- 経済産業省:ワット・ビット連携官民懇談会 取りまとめ1.0(2025年6月12日)
- 総務省:ワット・ビット連携官民懇談会 取りまとめ1.0の公表(2025年6月)
- 経済産業省:GX戦略地域制度(2025年8月26日)
- 時事通信(nippon.com):GX戦略地域18地域を認定(2026年9月11日)
- 福岡県:GX戦略地域の認定(2026年9月11日)
- 北海道新聞:石狩・苫小牧の事業者選定の方針(2026年9月)
- 内閣官房「データセンターの立地に関する関係府省連絡会議(第1回)」(2026年9月10日)
- 総務省:デジタルインフラ強靱化事業(2026年)
- 経済産業省:データセンター地方拠点整備事業 募集要領(2023年9月22日)
- ソフトバンク:苫小牧の補助金採択(2023年11月7日)
- ソフトバンク:クラウドプログラムの認定(2024年5月10日)
- Impress Watch:クラウドプログラム5件の認定(2024年4月19日)
- ARES:DCのREIT組入促進(2025〜2026年)
- Amazon:AWSの対日投資(2024年1月19日)
- Microsoft:日本への29億ドル投資(2024年4月10日)
- TelecomTV:Oracleの対日投資(2024年4月18日)
- DatacenterDynamics:Googleの日本初のDC(2022年10月)
- マイナビニュース:KDDI 大阪堺データセンターの稼働(2026年1月23日)
- ソフトバンク:堺の土地・建物取得(2025年3月14日)
- ソフトバンク:北海道苫小牧AIデータセンター(2026年)
- クラウド Watch:さくらインターネット石狩のGPU整備(2025年6月)
- クラウド Watch:石狩のBlackwell GPU稼働(2026年2月)
- ブロードバンドタワー:石狩再エネデータセンターとIOWN(2026年4月13日)
- NTTデータ:京阪奈 OSK11 の開設(2026年4月9日)
- NTTデータ:東京 TKY11 / TKY12(2026年4月17日)
- ビジネスネットワーク:NRT14の開業(2026年4月8日)
- 熊本日日新聞(共同):秋田のAI向けDC構想(2026年8月6日)
- 秋田魁新報 社説(2026年9月2日)
- 熊本日日新聞:薩摩川内のAI向けDC(2026年7月18日)
- データ・マックス:糸島のDC計画(2025年)
- 日本アジア投資:双葉町の分散型AIデータセンター(2025年10月7日)
- MONOist:三井不動産のDC事業(2026年7月24日)
- 経済産業省 制度設計WG資料:印西・白井エリアへの申込集中(2025年)
- 国土交通省資料(内閣府 規制改革WG提出):建設業の就業者(2025年5月8日)
- Japan Times:昭島のDC開発への住民の請願(2024年7月10日)