この章の要点
- 電力は5年でほぼ倍: 世界のDCの電力消費は2025年の485TWhから2030年に約950TWh(世界の電力の約3%)へ【見通し】。AI特化型のDCは約3倍に増える見通しです(IEA, 2026年4月)。
- 米国の予測は上方修正が続く: 2030年の米国の電力に占めるDCの割合は、LBNLが11.8%、EPRIが9〜17%と予測しています【見通し】。
- 投資は前例のない規模: 大手クラウド各社の2026年の設備投資見込みは、1社で年1,000億〜2,000億ドル台です。
- ボトルネックは電気と機器: 系統接続の待ちは中央値4年超、ガスタービンの納入枠は2031年まで埋まり、変圧器の納期は2年半前後です。
1. 世界の電力需要(IEA)
- 2024年の世界のDCの電力消費は約415TWhで、世界の電力消費の約1.5%でした(IEA Energy and AI, 2025年4月)。
- 2025年は485TWh。2030年に約950TWh(世界の電力の約3%)へ倍増する見通しです【見通し】。前年の見通し(945TWh)とほぼ同じ軌道です(IEA Key Questions on Energy and AI, 2026年4月)。
- 2030年の約950TWhは、日本の現在の年間電力消費をやや上回る水準です(IEA, 2025年4月)。
- AI特化型のDCの電力消費は2025〜2030年に約3倍になり、DC全体より速く伸びる見通しです【見通し】(IEA, 2026年4月)。
- 2024年の国・地域別のシェアは、米国45%・中国25%・欧州15%で、この3地域で約85%を占めます(IEA, 2025年4月)。
- 米国では、2030年までの電力需要の増加分のほぼ半分がDCから来る見通しです【見通し】(IEA, 2025年4月)。
- 2035年は基本ケースで約1,200TWh【見通し】。IEA自身が、DCの電力の現状値・将来値のどちらにも大きな不確実性があると明記しています(IEA, 2025年4月)。
- AIのDCでは、サーバーの負荷が1秒以内に定格の50%超も変動することがあり、2030年までにDCへ20〜25GWの蓄電池が置かれる可能性があります【見通し】(IEA, 2026年4月)。
2. 米国と世界の主な見通し(比較)
| 機関 | 対象 | 数字 | 時点 |
|---|---|---|---|
| LBNL(米エネルギー省) | 米国のDC電力 | 2023年 176TWh(米国電力の4.4%)→ 2028年 325〜580TWh(6.7〜12%)【見通し】 | 2024年12月 |
| LBNL 2025年アップデート | 米国のDC電力 | 2030年 649TWh(米国電力の11.8%、幅は9.5〜15.3%)【見通し】 | 2026年6月 |
| EPRI(米電力研究所) | 米国電力に占めるDCの割合 | 2030年 9〜17%(2024年版より約6割高い)。バージニア州は39〜57%になりうる【見通し】 | 2026年2月 |
| BloombergNEF | 米国のDC電力需要 | 2035年 106GW(前回予測78GWから上方修正)、米国電力需要の8.6%【見通し】 | 2025年12月 |
| Goldman Sachs | 世界のDC電力需要 | 現状約55GW(AI 14%・クラウド54%・従来型32%)。2030年に2023年比+165%【見通し】 | 2025年2月 |
| McKinsey | 世界のDC容量需要と投資 | 2030年に約219GW(うちAI 156GW)。2030年までの投資は6.7兆ドル【見通し】 | 2025年4月 |
| Dell'Oro | 世界のDC設備投資 | 2029年に1.2兆ドル(半分はハイパースケーラー)【見通し】 | 2025年8月 |
反対の見方もあります。米Grid Strategiesは、電力会社による「2030年までにDCの新規負荷90GW」という予測は「おそらく過大」で、約65GWが妥当としました(Utility Dive の引用, 2025年)。
3. 大手クラウドの設備投資(Capex)
| 会社 | 2025年の実績 | 2026年の見込み(直近の会社発表) |
|---|---|---|
| Alphabet | 914億ドル | 1,950〜2,050億ドル(2026年7月22日に上方修正) |
| Amazon | 約1,318億ドル | 約2,200億ドル(2026年7月30日、メモリ価格の上昇が理由) |
| Meta | 722.2億ドル(ファイナンスリース元本返済を含む) | 1,300〜1,450億ドル(2026年7月) |
| Oracle(5月決算) | FY2026 557億ドル | FY2027 900〜950億ドル(2026年9月10日に据え置き) |
| Microsoft(6月決算) | 2026年4〜6月の四半期だけで410億ドル(前年同期比+69%)。うち約3分の2はGPU・CPUなど耐用年数の短い資産。通期・暦年の見込み額は、リース会計の変更の扱いをめぐって報道ごとに解釈が割れているため、ここでは載せていません。 | |
出典: 各社の決算資料(SEC 8-K)と決算報道(2026年1〜9月)。Amazonの経営トップは「2,200億ドルでも2026年の需要を満たすだけの容量はない」と述べました(CNBC, 2026年7月30日)。これは会社の見込み額の紹介で、投資の判断材料として推奨するものではありません。
4. GW級のAIキャンパス(2026年時点)
| 計画 | 場所 | 規模 | 状況(公開情報) |
|---|---|---|---|
| OpenAI「Stargate」全体 | 米国(テキサス・ニューメキシコ・オハイオ・ウィスコンシン・ミシガンなど) | 計画8GW超・4,500億ドル超 | 2025年1月に「4年で5,000億ドル・10GW」の構想を発表。拠点の追加で計画容量が増えた |
| Stargate アビリーン | テキサス州 | 計画1.2GW | 稼働している量の推計は資料により割れている(Epoch AIは約0.3GWと推計/別のトラッカーは「2026年9月時点で容量の75%を引き渡し済み」) |
| Stargate ミラム郡・ミシガン | テキサス州・ミシガン州 | 1.2GW・1GW | ミラム郡は2026年1月にリース確定、ミシガンは2026年6月に着工 |
| Meta「Prometheus」 | オハイオ州 | 1GW級 | 2026年稼働予定。敷地内のガス発電所も建設中と報じられている |
| Meta「Hyperion」 | ルイジアナ州 | 数年かけて5GWへ拡大する構想 | 電力会社が新設ガス火力・送電線・蓄電池を計画 |
| Amazon「Project Rainier」 | インディアナ州 | 最終的に30棟・2.2GW超の計画 | 2025年10月時点で約50万個のAIチップ(Trainium2)が稼働 |
| Microsoft「Fairwater」 | ウィスコンシン州・ジョージア州アトランタ | — | 約700マイル離れた2拠点をAI専用回線で結び、1つの学習を動かす「AIスーパーファクトリー」(2025年11月) |
| xAI「Colossus 2」 | ミシシッピ州(メンフィス近郊) | 恒設の1.2GWガス火力へ移行 | 2026年7月、州当局との合意で仮設ガスタービン69基を2026年8月〜2027年7月に撤去することに。住民団体が2026年4月に提訴 |
出典: OpenAI(2025年1月〜2026年1月)、Epoch AI(2026年)、DatacenterDynamics(2025年7月)、Data Center Knowledge(2025年10月)、W.Media(2025年11月)、Earthjustice(2026年4月)ほか。計画値と実際に動いている容量は別物です。
5. 電源の取り合い:原子力とガス
| 組み合わせ | 中身 | 時期 |
|---|---|---|
| Microsoft × Constellation | スリーマイル島1号機(約835MW、Crane Clean Energy Centerに改称)を再稼働させ20年購入 | 当初2028年予定から2027年への前倒しの見込みと報道 |
| Amazon × Talen | Susquehanna原発から最大1,920MWを購入(2042年まで)。発電所の構内直結から系統経由に切り替え | 2025年6月発表 |
| Google × Kairos Power | 小型の新型炉(SMR)を2035年までに最大500MW導入 | 初号機(50MW)は2030年予定 |
| Google × NextEra | アイオワ州Duane Arnold原発(約615MW)を再稼働させ25年購入 | 2029年初めの再稼働予定 |
| Meta × Vistra・TerraPower・Oklo | 2035年までに最大6.6GWの原子力。Vistraとは2,176MWの20年契約 | 2026年1月発表 |
ガスでは、IEAが2030年までに15〜27GWのオンサイト(敷地内)天然ガス発電がDCに電気を供給する可能性があり、大半は米国と見ています【見通し】(IEA, 2026年4月)。発電所の構内に直結する方式は規制当局との調整が難しく、系統経由へ戻る動きもあります(Utility Dive, 2025年6月)。
6. ボトルネック(足りないもの)
- 系統接続: 米国で接続を待つ案件は2024年末で発電1,400GW+蓄電池約890GW。申請から運転開始までの中央値は、2000〜2007年完成組の2年未満から、2018〜2024年完成組の4年超へ延びました。2000〜2019年の申請容量のうち、稼働まで進んだのは13%です(LBNL, 2025年12月)。2025年末の待ち行列は前年比10%減の2,061GWでした。
- ガスタービン: GE Vernovaのガス発電機器の受注残は116GWで、納入枠は2031年まで埋まっていると報じられています。Siemens Energyはリードタイム3年以上(報道, 2026年)。
- 変圧器: 電力用変圧器の納期は平均128週、発電所用の昇圧変圧器は144週(2025年4〜6月の調査)。どちらも2023年以降100週を超えています(Wood Mackenzie調査の報道, 2025年)。
- 空き: 北米のDCの空室率は1.4%(2026年上期、過去最低)、北バージニアは0.2%です(CBRE, 2026年上期)。
- 地域の反対: 2024年5月〜2025年3月に、米国で180億ドルの案件が中止、460億ドルが遅延しました(Data Center Watch, 2025年5月)。
7. 大型の取引(金融商品になったDC)
| 時期 | 取引 | 規模 |
|---|---|---|
| 2024年9月 | BlackstoneとCPP Investmentsのグループが、アジア太平洋のAirTrunkを取得で合意 | 企業価値240億豪ドル超 |
| 2025年1月 | OpenAI・ソフトバンク・Oracle・MGXが「Stargate」を発表 | 4年で5,000億ドルの計画 |
| 2025年9月 | OpenAIとOracleの計算資源契約(報道) | 5年で約3,000億ドル・4.5GW |
| 2025年10月 | AIP・MGX・GIPのグループがAligned Data Centersを取得で合意 | 約400億ドル |
出典: AirTrunk、OpenAI、DatacenterDynamics、W.Media の各発表・報道。特定の企業・金融商品の売買をすすめるものではありません。
8. 年表(2022〜2026年)
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年11月 | OpenAIがChatGPTを公開(生成AIブームの起点) |
| 2024年9月 | xAIが10万GPUの「Colossus」を122日で構築したと発表/Microsoftとスリーマイル島1号機の20年契約 |
| 2024年12月 | 米DOE・LBNLが「2028年に米国DCの電力が最大12%」と報告 |
| 2025年1月 | Stargate(5,000億ドル)を発表 |
| 2025年4月 | IEA「Energy and AI」が2030年に約945TWhと予測 |
| 2025年7月 | MetaがHyperion(最大5GW)とPrometheus(1GW、2026年)を公表 |
| 2025年10月 | Aligned Data Centersの約400億ドルの取得合意 |
| 2026年1月 | Metaが最大6.6GWの原子力の契約を発表 |
| 2026年4月 | IEAが2025年実績485TWh・2030年約950TWhに更新 |
| 2026年7月 | Alphabet・Amazon・Metaが2026年の設備投資見込みをそろって引き上げ |
この章と一緒に使う計算アプリ
出典
本文の数字は次の公開資料によります(かっこ内は資料の時点)。見通し・予測は【見通し】、推計や当サイトの換算は【推定】と書いています。
- IEA「Energy and AI」Executive summary(2025年4月)
- IEA「Key Questions on Energy and AI」Executive summary(2026年4月)
- IEA「Key Questions on Energy and AI」PDF(2026年4月)
- 米エネルギー省:LBNL報告の公表(2024年12月20日)
- LBNL「United States Data Center Energy Usage Report: 2025 Update」(2026年6月)
- EPRI「Powering Intelligence 2026」(2026年2月)
- Utility Dive:BloombergNEFの米国DC需要予測(2025年12月)
- Goldman Sachs「AI to drive 165% increase in data center power demand by 2030」(2025年2月)
- McKinsey「The cost of compute」(2025年4月)
- DatacenterDynamics:Dell'Oroの設備投資予測(2025年8月)
- Alphabet 8-K 2026年第2四半期決算(2026年7月22日)
- CNBC:Amazon 2026年第2四半期決算(2026年7月30日)
- Meta 8-K 2026年第2四半期決算(2026年7月29日)
- Microsoft 8-K FY2026第4四半期決算(2026年7月29日)
- CNBC:Oracle 2027年度第1四半期決算(2026年9月10日)
- OpenAI「Expanding Stargate to Michigan」(2025年10月)
- OpenAI「Stargate × SB Energy」(2026年1月)
- Epoch AI:Stargate アビリーンの推計(2026年)
- stargate.how:拠点のトラッカー(2026年9月18日・二次)
- DatacenterDynamics:Metaのマルチギガワット級クラスター計画(2025年7月)
- Data Center Knowledge:Project Rainier(2025年10月)
- W.Media:Microsoft「AIスーパーファクトリー」(2025年11月)
- Earthjustice:Colossusのガス発電をめぐる訴訟(2026年4月)
- DatacenterDynamics:スリーマイル島原発の再稼働前倒し(2025年)
- Utility Dive:Talen × Amazon の原子力契約(2025年6月)
- World Nuclear News:Duane Arnold原発の再稼働(2025年10月28日)
- ANS:Metaの原子力契約(2026年1月12日)
- LBNL「Queued Up: 2025 Edition」(2025年12月15日)
- OilPrice:ガスタービン不足の報道(2026年・二次)
- EEPower:変圧器の納期(Wood Mackenzie調査, 2025年)
- CBRE:北米データセンターの需給(2026年上期)
- Data Center Watch:米国の反対運動の集計(2025年5月)
- AirTrunk:取得完了の発表(2024年12月)
- W.Media:Aligned Data Centersの取得(2025年10月)
- DatacenterDynamics:OpenAIとOracleの契約報道(2025年9月)