1. データセンターは何をする建物か
データセンター(DC)は、サーバー・ストレージ・ネットワーク機器を何千〜何万台も置き、24時間365日止めずに動かすための専用の建物です。クラウド、動画配信、ネット通販、企業の基幹システム、そして生成AIの学習と推論も、すべてどこかのDCで動いています。
建物の中身は、ほぼ次の3つの設備でできています。
- 電気: 電力会社から高い電圧で受けて、止まらないように二重・三重にしてサーバーへ届ける
- 冷却: サーバーが使った電気はほぼすべて熱になるので、それを外へ捨てる
- 通信: 外の世界(インターネット・顧客・ほかのDC)と太い回線でつなぐ
規模は床面積ではなく、IT機器に使える電力(kW・MW・GW)で表すのが業界の習慣です。1MW=1,000kW、1GW=1,000MWです。
2. 電気の通り道(受電からラックまで)
大量の電気を使うDCは、電力会社から標準電圧6万V(60kV)以上の「特別高圧」で受電するのが一般的です(三菱UFJ信託銀行, 2024年11月)。東京電力パワーグリッドは、大型需要向けに受電電圧154kVまたは66kVで空き容量50MW以上の変電所を地図で案内しています(東京電力PG, 2026年10月確認)。
- 特別高圧の受電設備(本線+予備線の2回線で受けることが多い)
- 変圧器で高圧(6.6kVなど)→低圧へ下げる
- UPS(無停電電源装置):停電の瞬間から発電機が立ち上がるまでをバッテリーでつなぐ
- PDU(電源分配ユニット):各ラックへ電気を分ける
- ラックの中の電源(PSU)→サーバー
停電が長引くときは非常用発電機が動きます。国内では多くのDCが最低48時間の連続給電ができる発電設備と燃料を持つとされ(ASCII, 2018年)、無給油で72時間給電できる例もあります(NEC, 2014年)。2018年の北海道のブラックアウトでは、石狩のDCが約60時間、発電機で動き続けました(ASCII, 2018年)。
3. 冗長化と「Tier(ティア)」
止まらないために、設備を予備つきで組みます。表記は次のとおりです。
| 表記 | 意味 |
|---|---|
| N | 必要な最小台数だけ(予備なし) |
| N+1 | 予備を1台足す |
| 2N | 系統ごと丸ごと二重にする |
| 2(N+1) | 二重にした各系統に、さらに予備を足す |
信頼性の物差しとして、米Uptime InstituteのTier I〜IVがよく使われます(Wikipedia, 二次)。
| Tier | ひとことで |
|---|---|
| I | 冗長なし・電気の経路は1本 |
| II | 機器に予備(N+1)があるが、経路は1本 |
| III | 同時保守可能:経路が複数あり、点検のために設備を止めてもサーバーは止まらない。商用DCの多くがこの水準 |
| IV | 耐障害:予期しない単一の故障でも止まらない(2N などで構成) |
Tierはいちばん弱い設備で決まります(電源がIVでも冷却がIIならII)。日本では日本データセンター協会(JDCC)の「ファシリティスタンダード」(ティア1〜4)も使われ、地震リスクなどを日本向けに調整しています。JDCCのティアは認証ではなく、事業者が「ティア3相当」と自己評価で示すことが多い点に注意が要ります(NTTコミュニケーションズ, 2016年12月)。
4. ネットワーク:IX・キャリアニュートラル・海底ケーブル
- IX(インターネットエクスチェンジ):複数の通信事業者が1か所でデータを交換する接続点です。国内の主なIX(JPNAP・JPIX・BBIX)は、2024年10月から東京のAT TOKYO 中央センター3号館にも開設され、「新たなネットワークハブ」と位置づけられました(インターネットマルチフィード, 2024年1月)。
- キャリアニュートラル:特定の通信会社に縛られず、複数の回線を選べるDCのこと。IXや多くの通信会社が集まる建物ほど、つなぐ価値が高くなります。
- 遅延の物理的な下限:光ファイバーの中の光は、片道で約5μs/km進みます(1,000kmで片道5ms)(CommScope)。東京〜大阪の往復は、ファイバー経路を500〜600kmとすると約4〜6msが下限です【推定・換算】。機器を良くしてもこの下限は縮みません。
- 海底ケーブル:海外との回線は、これまで千葉県南房総に陸揚げが集中してきました。日本〜カナダを結ぶGoogleの「Topaz」は茨城県高萩市と三重県志摩市に陸揚げされています(ビジネスネットワーク)。今後は北海道苫小牧市・福岡県糸島市・和歌山などへの分散が計画されています。
5. 種類(タイプ)と典型的な規模
| 種類 | どんなものか | 規模の目安【推定】 | 例(公開情報) |
|---|---|---|---|
| ハイパースケール(自社運用) | クラウド大手・SNS大手が自社で建てて使う大型DC | 数百MW〜GW級 | Metaの米国キャンパス(1GW級・5GW構想) |
| コロケーション(ホールセール) | 1社が数MW単位で区画や建物を丸ごと借りる | 数十〜数百MW | 三菱商事とDigital Realtyの合弁(印西・大阪のキャンパス) |
| コロケーション(リテール) | ラック単位で多くの企業が借りる | 数〜20MW | IIJ 白井DCC 2期棟(最大受電10MW・1,100ラック) |
| GPUクラウド(ネオクラウド) | GPUの計算能力を時間貸しする専業クラウド | 数MW〜GW級 | CoreWeave・Nebius(海外)、さくらインターネット・GMO(国内) |
| エンタープライズ(自社利用) | 企業が自社のシステム用に持つ | 小〜中規模 | クラウドや事業者DCへの移行が続いている |
| エッジ・地方の小型DC | 利用者の近くや地方に置く小型DC | 〜数MW | ハイレゾ 香川県綾川町(廃校を活用、2026年3月開所) |
規模の区分は業界で統一された定義がなく、上の目安は実例から当サイトが整理したものです【推定】。
Synergy Researchによると、大型のハイパースケールDCは2025年末に世界で1,360か所あり、世界の全DC容量の48%を占めます。2031年には67%になる見通しです【見通し】(Synergy Research, 2026年4月)。
6. ビジネスモデルと料金の単位
| モデル | 何で稼ぐか | 料金の単位 | 契約の特徴 |
|---|---|---|---|
| リテール型コロケーション | ラックの場所・電力・回線を小口で貸す | ラック単位の月額 | 多数の顧客。相互接続(つなぐ価値)が強み |
| ホールセール型コロケーション(ターンキー) | 設備まで完成させて大口に貸す | kW単価/月 | 数MW単位の大口契約 |
| パワードシェル | 電力と光ファイバーを引き込んだ「箱」だけを貸す。冷却・発電機・IT機器は借り手が入れる | 面積単価 | 税・保険・修繕も借り手が負担する10〜20年超の長期契約が多い |
| ビルド・トゥ・スーツ | 1社の仕様に合わせて特注で建てる | 個別 | 構想から稼働まで18〜30か月とされる |
| GPUクラウド | GPUを時間・期間で貸す | GPU時間・長期の計算資源契約 | 顧客はAI開発企業や大手クラウド自身のことも多い。設備投資を借入で賄う比重が大きい |
出典: Data Center Frontier ほか。首都圏ではラック料金が2025年に約3%上がり、主な理由は電気代の上昇と新規供給の少なさでした(CBRE、Real Estate Asia報道, 2026年1〜3月)。
誰が使っているか
- 日本の容量需要の6〜7割はハイパースケール(クラウド大手など)の需要です(CBRE, 2026年1〜3月)。
- AIの用途は、今は「学習」の比重が大きいものの、McKinseyは2030年に「推論」の需要が約93.3GW(2025年は20.9GW)となり、DC需要全体の40%超を占めて学習(約62.2GW)を上回ると予測しています【見通し】(McKinsey)。
7. よくある質問
データセンターは地元に雇用を生みますか?
建設中の雇用は大きい一方、完成後の常勤雇用は多くありません。米ジョージア州の監査では、2025年のDC関連雇用は建設28,350人に対して運用5,471人でした。米ネバダ州の大型案件は、10年間の常勤雇用73人に対して建設雇用4,000人超と見込まれています(Gigafact, 2026年1月)。日本で施設あたりの運用人員を示す統計は、今回の調査では見つかりませんでした。
データセンターは水を大量に使いますか?
冷却の方式によります。水を蒸発させて冷やす方式では水を使いますが、閉じた配管で冷却液を回す方式ならほとんど使いません。Microsoftは2024年8月以降に設計するDCで、チップを直接冷やす「蒸発ゼロ」の方式を採ると発表しました。ただし水を減らすと電力効率(PUE)がやや悪くなるトレードオフがあります(DatacenterDynamics, 2024年12月)。詳しくは電力と冷却へ。
ハイパースケーラーとネオクラウドは何が違いますか?
ハイパースケーラー(クラウド大手)は幅広いクラウドサービスを自社のDCで提供します。ネオクラウドはGPUの貸し出しに特化したクラウドで、顧客がAI開発企業や、ハイパースケーラー自身であることも多いのが特徴です。
「GW級」の計画は、発表どおりに実現しますか?
必ずしも実現しません。米テキサス州アビリーンのAIキャンパスは、拡張せずに1.2GWで止まる可能性が報じられました(IT之家, 2026年3月・報道)。国内でも、ソフトバンクの堺のAIデータセンターは将来の受電容量を「400MW超」から「250MW超」に見直し、稼働目標を2026年中に後ろ倒ししています(ソフトバンク, 2025年3月)。発表された計画値と、実際に動いている容量は分けて読む必要があります。
なぜ寒い地域がよいと言われるのですか?
冷たい外気で冷やせる時間が長いほど、冷凍機の電力を減らせるからです。北海道の石狩のDCは外気冷房で年間PUE 1.1台を見込んで建てられました。一方で、通信の遅延や顧客との近さの影響もあり、国内のDCの約9割はまだ東京圏・大阪圏にあります。詳しくは日本の最新動向へ。
この章と一緒に使う計算アプリ
出典
本文の数字は次の公開資料によります(かっこ内は資料の時点)。見通し・予測は【見通し】、推計や当サイトの換算は【推定】と書いています。
- 三菱UFJ信託銀行「不動産運用情報」No.150(2024年11月)
- 東京電力パワーグリッド「大規模供給ポテンシャルマップ」(2026年10月確認)
- NEC 九州データセンター 発表資料(2014年1月)
- ASCII:さくらインターネット石狩DCの停電時運転(2018年)
- Wikipedia「Data center tiers」(2026年10月閲覧・二次)
- NTTコミュニケーションズ:JDCCファシリティスタンダードのティア(2016年12月)
- インターネットマルチフィード:AT TOKYO CC3へのIX開設(2024年1月)
- CommScope「Latency in optical fiber systems」(2026年10月確認)
- ビジネスネットワーク:海底ケーブル陸揚げの分散(2026年10月確認)
- Synergy Research:ハイパースケールの容量シェア見通し(2026年4月)
- Data Center Frontier:パワードシェルとリースの形(時点不明)
- Real Estate Asia:CBREによる首都圏の容量とラック料金(2026年1〜3月)
- McKinsey「The future of AI workloads」(2025〜2026年)
- Gigafact:データセンターの常勤雇用(2026年1月)
- DatacenterDynamics:Microsoftの蒸発ゼロ冷却設計(2024年12月)
- ソフトバンク プレスリリース:堺の土地・建物取得(2025年3月14日)
- IT之家:アビリーンの規模についての報道(2026年3月・Bloomberg報道の転載)
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」データセンターの地域分布(2025年7月)
- クラウドWatch:さくらインターネット石狩DCの外気冷房とPUE(2011年)
- ビジネスネットワーク:IIJ 白井DCC 2期棟(2023年7月)
- クラウドWatch:ハイレゾ 香川・綾川町DCの開所(2026年3月)