SGL — 製造現場AI研究室

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dental technician / capability review

CAD/CAM・3Dプリンターのできること/できないこと

A-GIK-03|初版 2026-07-20|改訂 2026-07-20

研究の問い: 歯科技工のどこまでを機械が肩代わりでき、どこからが「あの人の手」にしか残らないのか。

実在ベンダー・公的資料の公開情報に基づく整理(出典は文末)

「歯科技工はもうAIとデジタルで自動化されている」という印象を持つ方もいるかもしれませんが、投資を検討するならどこまで実際にデジタル化が進み、何が依然として人の手に残っているかを分けて理解する必要があります。本記事は、社会医療診療行為別統計と実在する国内ベンダーの公開情報をもとに整理したものです。

設備投資を検討する前に、CAD/CAM・デジタル技工の基礎を体系的に押さえておくと、ベンダー選定時の質問の精度が上がります。

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1. CAD/CAM冠は小臼歯で59.3%まで浸透、大臼歯は27.5%

社会医療診療行為別統計によると、小臼歯のCAD/CAM冠の算定回数は年々増加し、令和6年には全部金属冠(金銀パラジウム合金)との合計に占める割合が59.3%に達しました。一方、大臼歯のCAD/CAM冠は令和6年時点で約27.5%にとどまっています(金属アレルギー患者は上下第一・第二大臼歯が保険適用、それ以外は適用範囲に条件あり・出典1)。前歯・小臼歯領域ではCAD/CAM冠がすでに主流になりつつある一方、咬合力が強くかかる大臼歯領域ではまだ従来工法が優位という部位による差が数字に表れています。

CAD/CAM冠が占める割合(令和6年・出典1) 小臼歯 59.3% 大臼歯 27.5% 咬合力の強い大臼歯は まだ従来工法が優位
図: 小臼歯・大臼歯別のCAD/CAM冠算定割合(令和6年)出典: 社会医療診療行為別統計をもとに当サイト編集部作成

2. 製作時間は短縮できる——ただし「できること」は限定的

学術研究によれば、CAD/CAM冠の製作時間は中央値60分(平均66.7分)で、全部鋳造冠の中央値77分(平均78.0分)と比べて約15分短縮されます(出典2)。光学印象(デジタル印象)についても、従来の印象採得と比較して診療時間が6分程度有意に短くなったとする海外の比較研究があります(出典3)。義歯領域でも実例があります。国内ベンダーのDGSHAPE(ローランド ディー.ジー.の子会社)は義歯用ジェッティング方式3Dプリンターを開発中で、義歯床と人工歯を一体成形するモノリシック構造の義歯を一工程で造形する装置を2027年の市場投入目標で進めています(出典4)。松風の「カーラ プリント システム」「カーラ プリント キューブ」はCAD設計したデジタルデンチャーを3Dプリンターで造形する製品として販売されています(出典5)。株式会社ケイテックスは、従来手作業で行っていた義歯の鋳造モデル製作を3Dプリンター(ProJet DP3000)に置き換え、品質の安定化と技工士不足への対応を図った導入事例を公開しています(出典6)。

3. できないこと——「AIが判断する」段階にはまだ距離がある

ここまで見た機能は、いずれも設計・造形・印象採得を機械が肩代わりし、最終的な色調・適合・咬合の判断は人が行うという役割分担です。厚生労働省の検討会資料でも、歯科技工録の記載様式(平成24年通知に基づく参考様式)はCAD/CAMなど近年普及した技術を想定していないことが課題として指摘されており(出典7)、制度面の整備すら技術の変化に追いついていないのが実情です。また令和6年度の実態調査で歯科技工士に「続ける上での問題」を尋ねたところ、「経済的な問題」53.3%、「長時間労働」35.4%、「歯科技工士不足」36.1%が上位を占めた一方、「最新のデジタル機器(CAD/CAM機器)の導入」を挙げたのは16.5%、「デジタル機器の導入による業務の効率化」は12.6%にとどまりました(出典8)。デジタル化の遅れそのものが離職の主因という位置づけではないことが、当事者調査からも読み取れます。

4. 導入前に自社でやるべきこと

CAD/CAM冠のように保険点数上の評価が確立した領域では投資判断がしやすい一方、大臼歯や義歯のように従来工法との使い分けが続く領域では、機材導入より先に自社のどの工程がボトルネックかを見極める方が先です。実際、厚生労働省の資料では、小規模技工所がデザインソフト(CAD)のみを導入し、ミリングマシン(CAM)を持つ大規模技工所とデータ連携する分業モデルの事例が紹介されています(出典7)。高額な機材を単独で持たずに済む選択肢があることも、投資判断の材料になります。色調採得や咬合調整の勘所がどこまで言語化されているかは、棚卸しチェックリストで先に確認しておくと精度が上がります。

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出典

(2026年7月20日閲覧)

  1. 社会医療診療行為別統計(各年6月審査分、8月審査分【R6】)、CAD/CAM冠・全部金属冠の算定回数。中央社会保険医療協議会総会資料として公表 mhlw.go.jp(PDF)
  2. 竹井利香・大島克郎・三浦宏子「CAD/CAM冠の製作に要する時間および業務状況の評価 タイムスタディ調査による分析」日本口腔保健学会誌, 12: 34-40, 2022(n=92、Wilcoxon符号順位検定 p<0.001) 同資料内引用(PDF)
  3. Yuzbasioglu E, Kurt H, Turunc R, Bilir H. "Comparison of digital and conventional impression techniques" BMC Oral Health 2014; 14: 10(n=24、光学印象で合計診療時間が約6分短縮) 同資料内引用(PDF)
  4. ShareLab NEWS「DGSHAPE義歯用ジェッティング方式3Dプリンターの開発を加速 IDS 2025参考出展を経て設計改良へ」(複数色・複数材料同時出力、モノリシック構造義歯、2027年市場投入目標) news.sharelab.jp
  5. 株式会社松風 製品情報「カーラ プリント システム」「カーラ プリント キューブ」(公式サイト) shofu.co.jp
  6. iguazu 3D 導入事例「3Dプリンター導入事例|医療分野|株式会社ケイテックス様」(ProJet DP3000導入による義歯鋳造モデル製作の自動化) iguazu-3d.jp
  7. 厚生労働省「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討の進め方(案)」令和7年8月6日 第5回検討会資料1(歯科技工録様式がCAD/CAM等を想定していない課題、CAD/CAMを用いた技工所間連携の事例) mhlw.go.jp(PDF)
  8. 厚生労働省「令和6年度歯科専門職の業務の実態調査 概要(速報)」歯科技工士が続ける上で問題となっていること(n=443、複数回答) mhlw.go.jp(PDF)

※「デジタル化の遅れが離職の主因ではない」という解釈は当編集部が今回確認できた調査データの範囲内での整理であり【推定】、業界全体を網羅した分析ではありません。各社製品の仕様・価格・市場投入時期は変更される可能性があるため、最新情報は各社公式サイトでご確認ください。

最終更新: 2026-07-20 | 参照した一次情報: 6件 | 本記事の推定値には【推定】を明記しています | 誤りのご指摘はお問い合わせ


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