SGL — 製造現場AI研究室

※本ページには広告(PR)を含む場合があります。アフィリエイトリンク経由のお申し込みで当編集部が報酬を受け取ることがあります。

mold & die / capability review

IBUKI・LIGHTzの金型チューニングAIのできること/できないこと

A-KAG-03|初版 2026-08-19|改訂 2026-08-19

研究の問い: 金型チューニングのどこまでを機械が肩代わりでき、どこからが「熟達者の指先」にしか残らないのか。

実在企業・公的支援事業の公開情報に基づく整理(出典は文末)

「金型の勘所はAIには真似できない」という印象を持つ方もいれば、「もうAIが熟練工の知見を再現している」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。本記事は、国の研究開発支援事業として実際に事業化まで進んだ実例をもとに、金型チューニングのどこまでが実際にAI化され、何が依然として人の手に残っているかを整理したものです。

自己判断の前に、金型・成形の基礎を体系立てて確認しておくと、現場の勘を言葉にする作業がしやすくなります。

Amazonで「予知保全 AI 導入 教科書」の実務書を探す →

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

楽天ブックスで「予知保全 AI 導入 教科書」の実務書を探す →

当サイトはAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイト・プログラムの参加者です。書影・価格は変動するため最新情報は各商品ページでご確認ください。(広告・PR)

1. 金型チューニングAI「機差・環境差推定システム」——山形県の実例

株式会社LIGHTz(茨城県つくば市)は、山形県の金型・樹脂成形メーカーである株式会社IBUKIとともに、中小企業庁の戦略的基盤技術高度化支援事業(通称Go-Tech事業)の採択を受け、「金型チューニングに関する熟達者知見のAI化による機差・環境差推定の研究開発」に平成29年度から令和元年度にかけて取り組みました(出典1)。自動車の樹脂成形部品で使われる金型は、取り付ける成形機の個体差(機差)や設置環境の温度・湿度の差(環境差)によって成形条件にばらつきが生じ、熟練者によるチューニング(調整)作業が欠かせません。このプロジェクトでは、熟達者の「言葉」と「思考回路」を独自の手法でネットワーク化・可視化し、IoT金型のセンシングデータと組み合わせることで、経験の浅いオペレータでも機差・環境差の要因を推定できるシステムを構築しました(出典1)。実証実験ではAIの推定結果と現場の対策効果の一致度80%以上を確認し、モデルケース2拠点での本番システムテストでは一致度83%(目標80%以上)、コスト削減効果74%(目標50%以上)という数値目標を上回る結果を得て、事業化に成功しています(出典1)。

2. 現場への実装——「ORGENIUS」で実績収集が半日から30分へ

このプロジェクトの実施主体である株式会社IBUKIは、金型内部に温度・圧力・変位センサーなど8種類のセンサーを内蔵し、製造プロセスを可視化する取り組みを進めています。さらに「ORGENIUS」と呼ばれるAIソリューションを導入してベテラン技術者の知見をネットワーク化した結果、従来は半日がかりだった実績情報の収集作業が約30分に短縮されたと報じられています(出典2)。開発には国立大学法人山形大学、アドバイザーとして三菱自動車工業株式会社・一般社団法人日本金型工業会も名を連ねており(出典1)、一企業の自社開発ではなく、産学官が連携した研究開発として進められてきた点が特徴です。

3. もう一つの実例——オムロン草津工場の金型加工AI制御

金型そのものの「調整」とは別に、金型を削り出す「加工」の工程でもAI活用は進んでいます。オムロン株式会社の草津工場では、IoT基盤「i-BELT」を用いてAIによる金型加工の自動制御を導入し、工作機に取り付けた振動センサーで切削時の振動から切削抵抗を算出し、工具の送り速度を自動補正するアルゴリズムにより、加工時間を40%、工具の摩耗量を20%削減したと報じられています(出典2)。この数値は当サイトの調査範囲ではオムロン公式ページでの一次確認ができておらず【要確認】、業界メディア記事の紹介にとどまる点に留意してください。

4. できないこと——熟達者の知見の「言語化」という前段階が必要

ここまで見た事例には、共通する前提があります。第一に、LIGHTz・IBUKIのシステムは熟達者への聞き取りを通じて知見をブレインモデル化する工程が前提になっており(出典1)、熟練者が社内にいない、あるいは知見の言語化に協力してもらえない状態では、そもそもAIモデルの構築自体ができません【推定】。第二に、このシステムが対象とするのは樹脂成形における機差・環境差起因の調整であり、型合わせ・仕上げ磨き・摩耗の見極めといった、より基礎的な金型メンテナンスの暗黙知全般をカバーするものではありません【推定】。第三に、オムロンの事例も特定の加工工程(切削の送り速度補正)に特化したものであり、金型製作全体を代替するものではありません。つまり「型合わせ・磨きの一次判断」を機械が完全に肩代わりする段階にはまだ至っておらず、AIが得意とするのは、既に言語化・センシング化された知見を新人でも再現できるようにする領域だと考えられます。

5. 導入前に自社でやるべきこと

AIモデルの構築には熟達者への聞き取りという前段階が必須である以上、まずは自社のどの判断が言語化されていないかを見極めることが重要です。型合わせ・磨き・寿命見極めの判断がどこまで言語化されているかは、棚卸しチェックリストで先に確認しておくと、投資判断の精度が上がります。

視座ステージ診断(無料・約7分・登録不要)— いま何を見て働いているかを20問で確かめる →

出典

(2026-08-19閲覧)

  1. 中小企業庁 Go-Techナビ「金型チューニングに関する熟達者知見のAI化による機差・環境差推定の研究開発」(株式会社LIGHTz・株式会社IBUKI・国立大学法人山形大学、事業実施年度:平成29年度〜令和元年度、事業管理機関:一般財団法人素形材センター、アドバイザー:三菱自動車工業株式会社・一般社団法人日本金型工業会。本番システムテストで一致度83%〔目標80%以上〕・コスト削減効果74%〔目標50%以上〕を確認、事業化に成功) chusho.meti.go.jp
  2. AI Market「金型設計とは?重要性と課題、AIを導入するメリットと活用事例を徹底解説!」(最終更新2025年2月22日。株式会社IBUKIのセンサー8種類内蔵・AIソリューション「ORGENIUS」導入・実績情報収集が半日から約30分に短縮、オムロン草津工場のIoT基盤「i-BELT」・加工時間40%削減・工具摩耗量20%削減の紹介) ai-market.jp

※出典2は民間のAI導入支援企業が運営する解説記事であり、掲載されている具体的な削減率・所要時間は各社の一次発表ページでの直接確認ができていません【要確認】。「できないこと」として整理した内容は、出典1の事業内容・対象範囲から当編集部が判断したものであり【推定】、LIGHTz・IBUKI両社が対象範囲の限定を公式に明言しているわけではありません。

最終更新: 2026-08-19 | 参照した一次情報: 2件 | 本記事の推定値には【推定】を明記しています | 誤りのご指摘はお問い合わせ


関連セクション

← となりナビ トップへ